小腸に発生する病変は消化管疾患の中で最も少なく、上部・下部消化管に対する内視鏡検査によって病変が存在せず、最終的に小腸疾患が疑われる場合に施行される。しかし、従来の小腸に対する検査である小腸造影やダブルバルーン検査は侵襲的であり、苦痛を伴う。

そのため、近年、小腸カプセル内胸検査が施行されるが、小腸観察は被検者に装着されたデータレコーダから検査後にモニターにて診断することになる。

カプセル内視鏡は自走ではないため、蠕動による移動となり、小腸全体の観察・診断には非常に時間を要する。

内視鏡医の労苦を軽減・補助するために、小腸カプセル内視鏡検査における人工知能(AI)の活用が近年、盛んに議論されている。

2012年のディープラーニング技術の登場以降はより一層AIを用いた小腸カプセル内視鏡の画像診断の研究が盛んになっており、これまでに多くの研究結果が発表されている。

今回、仙台厚生病院消化器内科により、これまでに報告されてきた研究内容報告がなされた。

びらん・潰瘍・血管拡張・出血においては、5,360枚の画像をAI構築用として用い、10,440枚(うち病変は440枚)の画像の判定を確かめ、 感度 88.2%、特異度90.9%、AUC 0.958と良好な成績であった。

ポリープ・腫瘍においては、17,507 枚(うち病変7,507枚)を感度 90.7%、特異度79.8%、AUC 0.911と高い精度で検出されたが、隆起性病変はカテゴリーごとの感度にばらつきがあり、 SMTはやや感度, 特異度も低かった。

また、炎症性腸疾患、特にCrohn病の潰瘍・びらん・狭窄所見においては、27,892枚の画像の評価を行い(うち病変は13,626枚)、狭窄や潰瘍形成は93.5%、AUC 0.989の精度であった

このように、ディープラーニングの技術の浸透により、小腸カプセル内視鏡検査に対する応用にも期待が高まっている。