口腔内から肛門に至るまでのヒト消化管内には、1000種類以上の総数約100兆個の細菌が生息し、腸管内細菌叢は、主に4つの門(Firmicutes、Bacteroidetes、Proteobacteria、Actinobacteria)の細菌から構成され、全体の80〜90%をFirmicutes門、Bacteroidetes門が占めている。

腸粘膜の炎症の再燃と寛解を繰り返す炎症性腸疾患においては、Firmicutes門、Bacteroidetes門が減少しており、特にFirmicutes門に属するClostridium属のいわゆる善玉菌であるclusterIVとXIVaが減少している。

善玉菌である乳酸菌、Clostridium butyricumに代表される酪酸菌やビフイズス菌に代表されるプロバイオティクスは、消化管上部で分解・吸収されず、消化管に共生する特定菌種に選択的に利用され、酪酸をはじめとした短鎖脂肪酸などの産生を介して宿主の腸内細菌叢を改善・抗炎症作用を発揮する。

このプロバイオティクスの投与だけでなく、中等度の炎症性腸疾患に対してはメトロニダゾールやシプロフロキサシンの内服も効果がある。

また、腸内細菌環境改善を目的として、健常者から採取した便を、上部内視鏡を利用して十二指腸に散布する方法や、下部内視鏡を使用して回腸に散布したり、注腸する方法が行われ、海外では、カプセル化した便移植製剤も存在する。

このように、今後、炎症性腸疾患における腸内細菌叢の改善によるに新たな治療戦略アプローチが期待される。