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Columnコラム

口腔内細菌と食道癌 

生体内において約30兆個のヒト細胞が約100兆の細菌細胞と共存し、約2万のヒト遺伝子が、500万〜800万の細菌遺伝子と共存している。

生体表面や内部における全ての微生物叢の中で最も大きい細菌集団は腸管内に存在し腸管細菌叢と呼ばれ、癌や炎症性腸疾患など様々な疾患との関連性が問題視され、特に、口腔内には500〜700種類の細菌が生息し、歯肉、唾液、舌表面など、各部位において特徴的な細菌叢を形成し、食道癌との関連性が指摘されている。

大腸などの他の消化管と比較すると、細菌数は少ないが、食道上皮にもStreptococcus属、Fusobacterium属、Vellonella属、Prevotella属などが豊富に存在する。

食道癌における寵愛細菌叢を構成する細菌種類や細菌数の減少により細菌叢の多様性が低下し発癌を惹起すると考えられている。

食道癌の組織像としては多くは扁平上皮癌と腺癌であるが、本邦では90%以上を扁平上皮癌が占める。

扁平上皮癌における細菌叢は、主にBacteroidetes門、Proteobacteria門などグラム陰性菌で構成されており、健常者と比べると、Fusobacterium属が多く、Streptococcus属が少ない。

16SrRNA菌叢解析では、食道扁平上皮異形成と上皮癌の症例において、胃細菌叢を構成するClostridiales目やErysipelotrichales目が多く存在しており、胃細菌叢が食道癌の発生に寄与している可能性が示唆されている。