検診における便潜血検査の普及に伴う精密検査としての大腸内視鏡時に、大腸癌が早期の段階で発見される頻度が増している。

また、早期大腸癌に対する治療も内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的軟膜剥離術(ESD)の普及により進歩が目覚ましい。

ただ、大腸はS状結腸や横行結腸の屈曲蛇行や上行結腸の深いヒダなどによりESD時におけるスコープ操作に苦慮する場合がある。

また、胃に比べ大腸壁は薄いため穿孔を生じる危険性が高い。

そのため、安全で確実な大腸ESDを施行するためには、良好な視野の維持が必要となる。

ESDは、まずナイフで病変部位周囲の粘膜切開を行う。

このナイフには、先端に絶縁体であるセラミックを装着したITナイフ、直角に曲がった針状のHOOKナイフ、ひねり線ワイアをループ状に曲げたFLEXナイフなどがある。

内視鏡先端に装着するSTフードで粘膜切開の粘膜下層を展開させ粘膜下層剥離を行う。

粘膜下層をより展開させるデバイスとしてはS-Oクリップがある。粘膜端の挙上したい部位にS-Oクリップを装着し、ZEOCLIPをループ部にかけ、S-Oクリップを牽引して病変対側の粘膜に装着する。これにより切開の視野を安全に確保することが可能となる。

これら以外にも、糸付きクリップ、Multi loop法、エンドトラック法、Magnetic anchor法など様々なトラクションデバイスが改良されている。

今後、より安全で容易なESDが施行できるためのデバイスの開発が待たれる。