2020.09.29
大腸カメラ検査時に発見されるベーチェット病に対するRUNX3治療法
ベーチェット病(BD)は、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つの症状を主症状とする慢性の全身性炎症性疾患である。個々の症状が消失と再発を繰り返すのが特徴の1つである。
一方、骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞において後天的に獲得された多段階の遺伝子変異が蓄積する事により発症する疾患であり、3種類の血液細胞(赤血球、血小板、白血球)の造血幹細胞に異常が発生し、赤血球、血小板、白血球がそれぞれ成熟する3系統の過程に同時に異常が発生する場合だけでなく、まずそれぞれの過程に異常が生じて、次第に3系統へと進行していく場合もあり、その血球異常により固有の症状が出る。このMDSの半数に染色体異常が指摘され、その中でもtrisomy8は約10%に認められる。
近年、BDにおいて、trisomy8陽性のMDS合併が認められ、その場合、眼病変は少ないが腸管合併症を有する率が非常に高いとされており、今後、BDにおける治療の選択のためにも、trisomy8をはじめとした遺伝子異常の検索が必要となると考えられる。
今回、癌抑制遺伝子である転写因子RUNX3の新たな癌遺伝子機能を解析して、そのMDS発症における役割を解明したことが報告された。マウスの細胞を調べた結果、RUNX3発現TET2欠損MDS細胞は、RUNX3と同じファミリー遺伝子である造血に不可欠な転写因子RUNX1の発現レベルとその機能を抑制していることが明らかになり、また、RUNX3が、強力ながん遺伝子として知られるMYC遺伝子と協調してMDS細胞を増殖させており、MYCの機能を阻害することによって、RUNX3発現細胞の増殖が有意に抑制されることがわかった。これは、ファミリー遺伝子の間の相互作用によって、正常な機能を抑制する新たながん発症の仕組みを示唆している。今後の研究のさらなる進捗により、転写因子RUNX3を標的 とした新規治療法は、難治性癌である骨髄異形成症候群だけでなく、BDにおいても新たな治療法として期待される。