バレット食道とは、本来扁平上皮に覆われている食道下部粘膜が、炎症により胃から連続して円柱上皮に置き換えられた状態を言い、80%が腸上皮化生を含み発癌のリスクが高くなる。

その変化した病変の大きさにより、3cm未満のショートバレット食道(SSBE)、3cm以上のロングバレット食道(LSBE)に分類される。

最近では本邦においても欧米同様LSBEが増加傾向にあり、年率発癌率は、LSBEが2倍以上発癌リスクが高い。

この原因の重要な因子として胃酸の逆流がある。

一方、ピロリ菌は幼少時の経口感染により胃粘膜を萎縮させ胃癌発生リスクを高める。

ピロリ菌はウレアーゼという酵素を分泌し胃内部の尿素を分解してアンモニアを産生する。アルカリ性であるアンモニアによりピロリ菌周囲の胃酸を中和し、自身の生息を可能としている。

そのため、ピロリ菌感染は胃酸を低下させるため、バレット食道発生と逆相関するとされている。

胃酸逆流症状を有する症例において、ピロリ菌感染陰性の場合はバレット食道が発生するリスクは約4倍になり、LSBEにおいては顕著である。

逆に、ピロリ菌感染はバレット食道癌発生リスクを約0.5倍に抑制するとの報告もあり、実際、ピロリ菌除菌により相対的に胃酸が増加しバレット食道発生率は高くなると考えられる。

しかし、除菌により胃癌発生リスクは低下するため、食道癌発生リスク増加とのデータ検証は今後必要となる。