胃食道逆流症(GERD(GastroEsophageal Reflux Disease))は近年増加の一途を辿っている。

GERDとは内視鏡で明確に指摘できる逆流性食道炎の有無に限定することなく、より広く胃食道逆流によって起こる病態である。

GERDのなかには、内視鏡的に、びらんを確認できるいわゆる逆流性食道炎とびらんを認めない非びらん性胃食道逆流症がある。

後者の非びらん性胃食道逆流症とは、内視鏡検査では食道下部に炎症所見を認めないが明らかな胃酸逆流による胸焼けなどの症状を有する病態である。

逆流性食道炎同様、放置すると胸焼けが消失するにも関わらず、飲み込みにくい、物が詰まる感じがするなどの嚥下障害、やがて胃酸逆流により喉の炎症を発生させ、咳が出始め咳喘息に移行する場合もある。

治療としてのPPI服用により、胸焼け症状は速やかに消失するが嚥下障害や咳などの症状は頑固な抵抗性を有する。

原因は、肥満男性では内臓脂肪による胃の上方への圧排が食道裂孔ヘルニアを惹起させることにより、また痩せ型女性や高齢者では胃食道接合部括約筋の緩みにより胃酸の逆流が起こり、上記症状が発生することが多い。

この原因となるヘルニアや括約筋の緩みは改善しにくいため、PPIによる治療だけでは胸焼け症状なども改善しにくいため、高脂肪食の摂取を控える、夕食時間を早める、就寝時の体位をなるべく左側臥位・仰臥位にするなどの生活スタイルを変えることが重要となる。