2020.07.11
大腸カメラ検査時に発見される潰瘍性大腸炎癌化リスク診断法の開発
炎症性腸疾患とは免疫機構の異常により免疫細胞が腸管細胞を攻撃することにより腸管に炎症を引き起こす疾患である。
主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2種類がほとんどを占め、ほかに腸管ベーチェット病などの稀な疾患もあるが、特に潰瘍性大腸炎が最も多く、年々増加傾向にある。
免疫機構異常が発生要因のため、根治することは稀で生涯治療を継続する必要があるが、治療により完治に近い状態に維持することができる。
ただ、投薬量減量や中止により症状の再発がみられ、発病して10年以上の長期間経過すると、病変部分からの癌化傾向が高まる。
今回、潰瘍性大腸炎患者に発生する大腸癌に特化した世界初の癌化リスク診断法が開発され、新規検査法として実用化に向けた研究が報告された。
長期罹患した潰瘍性大腸炎患者には、大腸癌発生のリスクが高いため、毎年、大腸内視鏡検査が推奨されているが、潰瘍性大腸炎に発生する大腸癌は大腸粘膜に炎症を伴うため色調での判別が困難なため診断が難しい。
また、潰瘍性大腸炎の長期罹患患者全員に検査を施行することは、医療経済的観点からも効率的ではないため、潰瘍性大腸炎患者の癌化リスクを評価できる低侵襲で精度の高い診断方法の確立が待たれていた。
今回、開発された癌化リスク診断法は、肛門鏡および開発した検査キットを使用した直腸粘膜1㎜各程度の採取により、全大腸における癌の発生リスクを評価できる検査法である。
現在、潰瘍性大腸炎と診断された患者の直腸粘膜の集積を行い、測定・解析を進められており、新規検査法としての実用化が期待される。