2020.07.09
大腸カメラ検査時に発見されるIBDにおけるバイオマーカーとしてのMAIT細胞
MAIT細胞(mucosal associated invariant cell )は末梢血T細胞中の1〜8%を占める自然リンパ球であり、腸管粘膜固有層やパイエル板に多く存在する。
T細胞、iNKT細胞と同様に、NK細胞のマーカーを発現し、さらに遺伝子再構成されたTCRα/β鎖を発現する細胞である。
また、MHC class Ⅰb 分子であるMR1(major histocompatibility molecule related)に拘束される。
近年、自己免疫疾患や感染症、癌といった様々な疾患でMAIT細胞が関連していると報告されている。
炎症性腸疾患のうち、最も多く見られる潰瘍性大腸炎は直腸から連続性に広がる慢性の腸管炎症を主体とした原因不明の疾患であり、下痢・血便・腹痛といった症状を呈し、再燃・寛解を繰り返す慢性の経過をたどる。
今回、潰瘍性大腸炎におけるMAIT細胞の役割を明らかにすると共に、MAIT細胞のバイオマーカーとしての有用性が報告された。
それによると、潰瘍性大腸炎におけるMAIT細胞の末梢血中頻度や活性化状態をフローサイトメトリーにより測定し、検討し、また、腸管組織におけるMAIT細胞頻度をactive及びnon-active群で比較検討を行っている。
それにより、潰瘍性大腸炎では末梢血中MAIT細胞頻度は低下しており、炎症の強い腸管組織に集積しており、また、潰瘍性大腸炎のMAIT細胞は活性化されやすく、炎症性サイトカインを多く産生することも明らかになった。
更に、MAIT細胞の活性化状態が疾患活動性や内視鏡的重症度と相関していることも確認された。
以上からMAIT細胞は潰瘍性大腸炎の病態に関与している可能性が示唆され、炎症性腸疾患におけるMAIT細胞の役割が明らかにすることにより、バイオマーカーのみならず新たな治療へ活用できる可能性も期待される。