炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎やクローン病に大別され、症例において発生する大腸癌などは、腸炎関連性大腸癌と呼称される。

Follow upには内視鏡検査が用いられるが、出血やびらんを呈した大腸炎症病変に発生するdysplasiaは発見・診断に苦慮する場合がある。

IBD前癌病変(dysplasia)分類における2017年のWHO分類におけるconventional typeとSSA/P、TSA、serrated NOSは、新WHO分類においては、それぞれintestinal type(adenoma-like)、serrated typeと称されており、serrated typeは分類されてない。

また、hypermucinous typeに相当するものはmucinous(gastric) type dysplasiaとして病理組織像が提示されている。

前述のintestinal typeとの記載を合わせると、構成細胞の細胞系列に着目してdysplasiaを胃型と腸型に分類する試みがなされたと考えられる。

この点に関しては、IBD関連腫瘍は、胃型の粘液産生を伴うことが知られており、胃型粘液の発現が亢進し、腸型マーカーのCDX2や大腸上皮マーカーのSATB2の発現が有意に低下しているが、HE染色所見のみでdysplasiaを胃型と腸型に分類するのは困難であるとの報告もある。

このように、炎症性腸疾患に起因する腸炎関連性大腸癌は、今後より一層のデータ集積や解析が必要となると思われる。