内視鏡検査の発展により、消化器癌が早期の段階で発見・治療されるケースが増えている。

ただ、進行性大腸癌に至って発見される場合も少なくなく、外科的手術が施行されるが、転移を伴う難治性大腸癌においては抗癌剤治療などが行われる。

しかし、このような増加の一途を辿る進行性大腸癌における発生のメカニズムは明らかではない。

RNF43 は正常組織では主に幹細胞で働いており、Wnt受容体タンパク質の分解に関与することでWnt シグナルの過剰な活性化を防いでいる遺伝子であり、胃癌や膵臓癌など消化器官系の癌において高頻度に変異を起こしている。

今回、大腸癌症例におけるRNF43 遺伝子の変異によりリン酸化スイッチが破壊され大腸癌細胞の増殖を抑制したり、また増殖した大腸癌細胞を排除することも出来なくなっていることが発見された。

一般的に発癌には最低でも3段階の遺伝子変異が必要と考えられているが、RNF43 に変異を持つ場合はふたつの遺伝子変異だけで大腸癌が発症することがマウスのモデル実験によって確認された。

さらにマウスに移植した大腸癌の中で RNF43 のリン酸化スイッチを人工的にオンにすると、遺伝子変異によって欠失した RNF43 の機能が回復し、大腸癌発生も抑制された。

これは RNF43 の遺伝子変異により大腸癌を発症した場合、RNF43 のスイッチを外部から強制的に入れることが可能となれば、大腸癌の有効な治療法になり得ることを示唆している。

本研究成果は、Nature Communications 誌にオンライン掲載された。